March 14

三月十四日

谷山麻衣は机の上にあるものをじ〜と見た。頭を右へ傾げてそれを見る。反対側に傾けるとまたそれを見る。そこにあるものは消えなかったし 形も変わらない。どう見てもあれは。。。アップルパイ。

なぜ机の上にアップルパイがあるか 誰がそれを置いたのか 全然分からない。今日はホワイトデイ。そして、今オフィス内にいる人達となると。。。

《今、ナルとリンしかいないよね。。。》

麻衣は少し考えた。

《リンならありうるかも知らない。。。?》

麻衣は頭を振る。

《多分違うと思う。しかし、それなら残るのはナル。》

麻衣はもっと強く頭を振る。

《それ、絶対ありえない。それになぜパイなの?!今日はホワイトデイ。チョコだったらまだしも、でも、これはパイ。アップルパイ。意味分かんない。》

そして、その時、オフィスの奥からドアが開く小さな音がして数秒後ナルは応接間に顔を出す。

麻衣の姿を見ると 「麻衣、お茶。」

麻衣はちょっと不振そうな顔をしてながらナルを見る。そして立ち上がる。

「はい〜。」

彼女はそう言い残して給湯室に行った。

《アップルパイを置いたのは、ナルだったのかな。。。だって、最初、日本流行なバレンタインよく分からなかったようだったし。。。》

麻衣はこの数年のバレンタインのことを思い出す。そして、今年のことを思い出して赤面した。小さな事故から始めた事事。。。 全然思わなかった。あのナルがそんなことを。。。

麻衣は強く頭を振ってバレンタインの記憶を頭から追い出そうとする。

《駄目!今、そんなこと考えちゃ駄目!他考えるべきことがあるのだ!》


数分が経つと麻衣はナルのお茶をトレイに載せ給湯室から出る。応接間を見回すとナルはいつも座ってるところで読書してることを認識すると 彼の脇にあるテーブルの上にお茶を置く。そして、彼女はいつもの席に座って顔を竦める。

《あのパイ、すっごく気になる。。。》

麻衣は机に置いてるパイとナルを交代で見る。数分間も彼女はそれを繰り返す。

*ばたん*

ナルは読んでた本を閉じると麻衣を軽く睨む。

「いくら僕の顔はいいとしても、僕はそんなにジロジロ見られるのが好きじゃないですが、谷山さん。」

「あぁ。。。」麻衣は少し頬を赤く染める。

「ご、ごめん、そういうつもりじゃなかったが。。。」声が途切れる。

麻衣は再び机のほうに視線を向ける。

「。。。。。。あの。。。デスクにあるパイ、あれ、安原さんが置いたんですか?」

ナルは小さな溜息を落とし頭を振る。

「安原さんはまだオフィスに来てない。今日は何の日かご存知ですか谷山さん?」

「え?」

麻衣はちょっと驚いたようにナルを見る。まさか、彼はホワイトデイのことを知ってるだなっんてほとんど思ってなかった。

「三月十四日。。。ホワイトデイ。日本では男が女に。。。」

ナルは頭を振る。

「March 14th - Pi Day。」

「P-Pi... Day...?って何。。。?」

麻衣は全然分からない顔をしてナルを見る。

ナルは嘆息する。

「そんなことも分からないんですか、谷山さん?数学で習うパイ、その数字知ってますか?」

「それくらい知ってるやい!確かあれは。。。3.14159だよね。」

ナルは頷いた。

「そう、3.14159。それを日日に変えるとそれは3.14,1:59だから三月十四日1時59分。」

ナルは麻衣を見てちょっと意地悪そうに笑う。

「もし、麻衣はもっと早く此処に来てたら、そのパイを食べさせてもよかったが。。。」

それを聞いた麻衣は瞬時的に赤くなった。それ、バレンタインデイに起こった 今考えちゃいけないこと内の一つだ。

「い、い、い、い、いや、そ、そ、それはけ、け、け、け、結構ですー!そ、そんなこと全然期待してません!」

そして、麻衣ははっと気付く。

「ええええ!?これ、ナルが置いたの!?」

麻衣は絶句した。ナルは甘いもの好きじゃない。アップルパイはそんなに甘くなくてもそれなり甘い。

ナルはその問いを答えず麻衣を見る。

「麻衣、お茶。所長室へ。」

彼はそれを言い残し応接間を後にした。

麻衣は机のパイを睨んでちょっとがっかりした。

《パイをくれたのは嬉しいけど。。。うううう。。。あんまりホワイトデイらしくない。。。》

彼女はちょっと唸った。


*コンコン*

麻衣は軽く所長室のドアをノックしてナルの部屋に入る。

「ナル、お茶持ってきたよ。」

彼女は机のほうに行って側にお茶を置く。そして、そこから離れようとしたが、その時、ナルは彼女の腕を掴む。

「?ナル?」

麻衣は彼のほうに振り返ると突然身の危機を感じるがも遅し。

ナルはぐいと腕を引っ張り彼女の唇を奪う。突然の出来事にうまく反応できなかった麻衣はされるがままになった。そして、深いキッスから漸く解放されてもうまく言葉を出せない。

「な、な、な。。。」

ナルは少し笑う。

「何かを期待してるようだったからこれで満足?」

「!何すんの!?ナルの馬鹿!」

その叫びがナルのオフィスに木霊してる間麻衣はあそこから飛び出した。

麻衣は 安原がオフィスに着いて彼女の服のえりにつけられた花の形をしてる小さなピンのことを問うまで そのピンに全然気付かなかった。

 

 

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