序幕

あたし、谷山麻衣、21歳。あたしには 好きな人がいる。でも、一度もその気持ちを 彼にこくったことがない。だって、信じてもらえないと思うの。

彼、 日本で渋谷一也と名乗った青年通称ナルは 今日イギリスに帰る。

ジーンを探し出し 日本に戻ってから 四年もたったが、 今日、本当にイギリスに帰るの。

多分、二度と日本にくることがないでしょう。だから、せめて今だけ言っていいよね?あの夏の日以来 一度も言ってなかた言葉。あの時、あたし 相手を間違ってたが 今は違う。この気持ちは誰に向けているのか ちゃんと分かってる。でも、だからって もし あたしが何かを言っても 信じてもらえなかったでしょう。

あはは。あたし、本当はかなり卑怯かもね。あの夏のように 再び最後の最後でこんなことを言うだなんて。ま、望みはないから言えるしね。。。 うんん。。。かなり卑怯かな。。。でも、本当に伝えたいから、せめて 勇気を出せるとき、今だけ言わせて貰うね。だって、今しかない。ここ、成田国際空港。此処じゃなければ、もう言えなくなっちゃうんだもん。そして、今 リンさんは カウンタで チェックインしてる。二人きりになれるチャンス 今しかない。だから。。。

あたし、隣に立ったまま 本を読んでる青年を 見上げる。そして、自分の気持ちを彼に伝える勇気を出す。

「あのね。。。」

ナルは何の反応もせずただ本を読み続く。ま、今のところ 反応があったらかえって不気味だから あたし 全然気にせず話を続いた。

「ナルが イギリスに帰るし もう、二度と会えないと思う だから 言うなら今しかない。そして、今しかないから言える。あたし。。。うんんと。。。、本当はね、かなり前。。。もう一年半前だったかな。。。 ナルのこと 好きになったのは。ジーンの代わりとかじゃなくて。でも、それを信じて貰えないと思って 今まで ずっと言えなかったの。」

おおお, 珍しい。

ナルは本から顔を上げて あたしを見てる。

あたし 少し笑って 舌を出す。

「言うチャンス、今しかないから言っちゃった。」

「。。。。。。」

闇色な眼がジーとあたしを見てる。

うわわ、あたし 少し焦る。そして、どこまで言ってしまったことに気付く。

「うああ。。。あたし、本当に言っちゃった。あ、あ、あのね。忘れていいから!ね! 」

あの視線は少し痛くて あたし まともに ナルの顔を見えない。だって、恥ずかしいんだもん。

「。。。本当に忘れていいの?やっと言ってくれたのに?」

彼は静かにそう聞いた。

顔が赤く染まっていくのを感じながら あたし ちょっと言葉に詰まる。

「だ、だって!今しか言えないから言ったのに!」

顔を上げると ナルの目が楽しげに笑ってる気がした。

それ、ありえない。絶対ありえない。。。よね。。。?

「麻衣の気持ち 二年前から気付いていたが?」

うあああ!あたし、そんなにはっきり読めやすい人なの?!これ以上ないほど顔が赤くなってしまった。そして、ナルの言葉に違和感を感じた。

あれ?

二年前から??

「え?あたし。。。一年半っと言わなかったっけ?」

はてなマークが頭の上に飛び交う。

ナルは小さく頷いた。

「言ったな。」

「じゃ、なぜナルが二年前からあたしの気持ちに気付いてんの?それ、絶対おかしい。」

ナルの目元の皺が少し深くなる。 。。。こいつ、笑ってるな。

「おかしいのか?」

彼が小さく笑って尋ね返す。

「お、おかしいに決まってんでしょう!自分よりナルが気付くだなんて。ありえない!ナル、朴念仁だも〜ん。」

あたし、頬を膨らませてそっぽを向く。

「あ、そ。」

素気ない答えが帰った。ナルのことだから それくらい言われても何も思ってないと思うが、それでも ちょっと気になって あたし彼の顔を見て。。。

硬直した。

彼の顔に すっごく綺麗で楽しそうけど どこか不穏に感じる笑みが 浮かんでいる。

彼が笑うのは凄く珍しいし 凄く綺麗だから あたしは あの笑顔に見入ってしまう。。。

そして、硬直してる間に すごく綺麗な眼が突然近づいて、柔らかい何かがあたしの唇に掠める。

い、今のは なに。。。??

あたし、見開た目でナルを見る。思考すべてが停止してしまったが、それで終わらなかった。

?!

あのナルがあたしを抱きしめてる。。。?!

「答えが欲しければ 英国に来るんだな 麻衣。」

ナルが耳元でそう囁いて あたしを放す。そして、彼が離れていく。

あたし、されるがままされて 呆然と立つしか出来なかった。

数瞬が経つと、あたしは はっとして 我に返る。そして、彼が去ったほうに振り返る。

ナルはもうリンさんのところまで着いて セキュリテイーのほうへ向かおうとしてた。

あたしは何も出来ず、手を振ることさえもできず ただ、指で自分の唇を触れるしかできなかった。

彼は、あたしに一瞥もくれず去っていく。リンさんは 少し戸惑ってあたしのほうに振り向いて 少し頭を下る。そして ナルの後を追う。

行ってしまう。 

。。。。。。いや、行ってしまった。

《答えが欲しければ 英国に来るんだな。》

彼がそうゆった。

。。。。。。

でも、答え って。。。

どっちの?

質問の答え?

それとも。。。??

あの日、あたしは 何時まであそこに立ってたか どうやって家に戻ったか さっぱり覚えてない。そして、どっちの答えか どっちでも 本当に聞きたいのか あたしはまだ 全然分かんない。

 

 

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